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高森明勅
2022.12.31 08:00皇室

旧宮家プランは“憲法の要請”でない故「門地差別禁止」に違反

いわゆる旧宮家系国民男性だけが婚姻を
介さないで“特権的”に皇族の身分を取得
できるように制度を改めるというプラン。

これは、「男系男子」による皇位継承という
憲法の下位法にすぎない“皇室典範の要請”
(それは決して憲法そのものの要請ではない!)を、
「門地(家柄・家格)による差別禁止」という上位にある
“憲法の要請”より優先しようとするもの。
だからもちろん憲法上アウト。

一方、「皇位の世襲=皇統(天皇のご血統、男子・女子、
男系・女系を含む)による親→子→孫という親子関係を
基本とした(直系優先による)皇位継承」という
憲法の要請は、明らかに天皇のご血統、皇室という
家柄=門地を特別扱いするもの。

だがそれは、憲法における「門地による差別禁止」という
“一般規定”に対して、憲法自体(!)に設けられた
“例外規定”に根拠を持つので憲法上、もちろん許容される。
当たり前だ。

そうであれば、皇位の「世襲」継承という
“憲法の要請”に応じて、皇室典範を改正し女子・女系の
継承資格を認めても(これが前提)、なおかつ
皇位継承が至難になり、皇室内に婚姻を介して国民から
皇族になられた方はおられても、「皇統に属する」皇族が
不在という“極限的な局面”では、既に国民となった
「皇統に属する子孫」が男系・女系、男子・女子の
区別なく、“直系に最も近い方(!)”から順番に
皇籍取得の対象とすることは、憲法の例外規定に
根拠を持つ措置として当然、一般規定としての
「門地による差別禁止」から除外され得る。

国民が皇籍を取得すること自体が、
そのまま憲法違反になるのではない。
そのことは、これまで婚姻による皇籍取得が
普通に行われてきた事実からも、明らかだ。
この場合、その婚姻の対象が(旧宮家など)特定の家柄に
“限定されない”ことから、もとより
「門地による差別禁止」に抵触しない。
憲法違反かどうかは、改めて言うまでもなく
“憲法の要請”との関わりで判断されるべきことだ。

しかし、にわかに信じられないことながら、
憲法それ自体の要請と下位法である皇室典範の要請とでは、
優先度に明確な違いがある、つまり、憲法の一般規定の
適用を免れ得るのは憲法自体の例外規定に
根拠を持つ場合だけという、分かりきった事実に
まるで気づいていない人がいるらしい。

そこを混同して、皇室典範の要請にしか根拠を持たない
(=憲法の例外規定に根拠を持たない)憲法違反の
“旧宮家プラン”を擁護しようと、空しく
悪戦苦闘している人たちだ。

皇位継承資格の「男系男子」限定を前提とした
旧宮家プランが憲法違反でないことを主張するには、
それが法律である“皇室典範の要請”を越えた、
最高法規である“憲法の要請”であることを論証する必要がある。
しかし、憲法の要請はどこまでも「皇位の世襲」
=皇統(男子・女子、男系・女系を含む)による皇位継承。
よって、遂にその論証は成功しない、という気の毒な事情がある。

それは憲法の要請なのか?
それは憲法の例外規定に根拠を持つのか?
旧宮家プランを唱える場合、「門地による差別禁止」を
免れる為には、上記の問いに説得力のある“イエス”の
回答を用意しなければならない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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